回収できない…貸倒損失を計上できる3つのケース

取引先から売上がなかなか入金されない。
経理担当者の頭を悩ます大きな問題です。
新型コロナウイルスの影響により、売上げがなかなか回収できないというケースも増えてきているかもしれません。
請求していずれ入金されればよいのですが、入金されずにずっと帳簿に残ってしまっている金額(売掛金)ありませんか?
明らかに回収できないようなものは、貸倒損失として経理処理する必要があります。
しかしこの貸倒損失は「回収は見込めないし、そろそろ貸倒損失に計上しておこうかな」と自由なタイミングでは計上できません。
事実と正しいタイミングでの処理が必要となります。

貸倒損失を計上できるケース

貸倒損失は客観的な事実がないと計上できません。
客観的な事実とは大きく分けて3つあります。

①法律上の貸倒れ
②事実上の貸倒れ
③形式上の貸倒れ

貸倒損失を計上するためには、①~③のいずれかの該当していなければなりません。

①法律上の貸倒れ

会社更生法や会社法、民事再生法の規定により債権が切り捨てられた場合や、債権者集会などの協議で合理的な基準によって切り捨てられた場合をいいます。

また法律による切り捨てではないものの、債務者(取引先)の債務超過の状態が長期間続いていて、売掛金などが回収できない場合に、その取引先に内容証明郵便などの書面で通知した場合も法律上の貸倒れに該当します。

法律上の貸倒れに該当する場合には、貸倒損失の経理処理の有無問わず、事実が発生した事業年度の損金に入れなければなりません。

②事実上の貸倒れ

債務者の資産状況や支払能力などから売掛金等の債権金額の全額が回収できないことが明らかになった場合をいいます。
事実上の貸倒れの場合には、回収できないことが明らかになった事業年度に、貸倒損失として経理処理しなければなりません。

③形式上の貸倒れ

⑴取引停止から1年以上経過した場合

支払いが滞るなど取引先の資産状況が悪化したため取引を停止した場合で、取引停止から1年以上弁済がないときは、形式上の貸倒れに該当します。
ここでいう取引停止日は、最後に取引があったときと最後に弁済があった時などのうち一番遅い日のことをいいます。

⑵取立費用のほうがかかる場合

督促しても支払ってもらえず、さらに取立費用が回収すべき金額より多い場合も形式上の貸倒れに該当します。

形式上の貸倒れは、売上にかかわる債権のみ対象です。例えば、貸付金など売掛債権でないものは形式上の貸倒れに該当しません。また貸倒損失計上の際には、1円を備忘価額として帳簿に残しておく必要があります。

※備忘価額‥‥あくまで形式的な貸倒れで、資産(売掛金)が残っていることを帳簿に示すための処理です。例えば売掛金10万円を貸倒損失として計上する場合には99,999円を損失計上し、1円は帳簿に残しておきます。

 

時効と貸倒損失の関係

債権には時効があり、売掛金については時効が5年と定められています。
しかし、時効の経過=貸倒損失とはならない点に注意しましょう。
時効が過ぎたらからといって債権・債務は消滅していないのです。
取引先からの「時効期間が経過したので、債務の弁済はしません。」というような意思表示があって、はじめて債権・債務は消滅し貸倒れの事実となります。

 

タイミングを逃すと経費にできない

貸倒損失は貸倒れの事実が発生した事業年度に、経費(損金)にしなければなりません。
貸倒れ発生年度と損金に入れる処理を行う事業年度が合っていないと、調査があったときには期ズレとして否認されてしまうこともあります。
否認されてしまった場合に、貸倒れの発生した事業年度まで戻って確定申告書を修正できればいいですが、修正できる期限は当初の申告期限から5年と決められています。
期限が過ぎてしまっていれば、その貸倒れについては損金にできないのです。

 

貸倒損失の計上は慎重に

貸倒損失を計上するには、貸倒れの事実と正しいタイミングでの処理が必要です。
またできる限りの根拠を用意しておくことも重要です。
例えば、実務上で使われることが多い「形式上の貸倒れ」に該当する場合には、最終取引日から1年以上経過したからという理由だけではなく、資金を回収しようとした努力を残しておくことで否認されるリスクを減少させることができます。

できれば計上したくはない貸倒損失ですが、万が一貸倒れてしまったときには根拠とタイミングを曖昧にせず、慎重に損失計上しましょう。

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